エマージェンシーザック

被災地では今なお懸命な活動が続いている。直接的な被害を受けなかった身としては、募金や物資提供などできる範囲のことはやろう。後は粛々と経済活動を営むしかない。歯がゆい思いもあるが、やむを得ないと言い聞かせる…

震災を機に、収納庫の奥に追いやっていた避難グッズを再度「至近距離」に常備した人が多いと聞く。私もその1人だ。何を入れていたのかも忘れており、中身をチェックしながら整え直したのはつい最近のことだ。ボトルに入れた飲料水、ワンバーナーとコッヘル、手回し充電機能付きラジオ、救急セット、アーミーナイフ、ホイッスル、乾電池、軍手…。これ以上欲張ると、何泊ものソロキャンプに出かけるような大荷物になりそうなので、ほどほどの分量に絞って専用ザックに収める。

明かりも用意しておこう。まずはBlackDiamondのヘッドランプ「Spot」だ。LEDの普及によって、ハンディライトの類は格段に進化した。明るいのに電池の持ちがすこぶるよいのだ。Spotの場合、低照度モードで使えば約200時間も持つらしい(メーカー公称値、単4電池×3本)。フィラメントバルブからLEDへとパーツ交換したMAG LITE AAとともに避難用ザックにしまい込む。

迷ったが、予備としてキャンドルランタンも用意しておくことにした。オーソドックスなUCO社のアルピニストランタン。真鍮製ロウソク1本タイプである。以前、ソロテントをかついで単独キャンプにいそしんでいた頃に愛用していたものだ。ボディ上部を引っ張ると、するするっとガラスのホヤが表れる。底蓋一体型のキャンドルアタッチメントを一旦取り外して芯に点火し、再びケースに戻して使う。高々ロウソク1本であり、決して明るくはない。それでも人間の目は順応性が高いようで、そんなささやかな光でも目が慣れると周囲が見えてくる。通気性を考慮したソロテントの天井にこいつをつり下げると、テント内面に反射する明かりも手伝って、文庫本ぐらいなら十分に読めた記憶がある。

誰かにあげてしまって手元にほとんど残っていないが、UCOのランタンには色々な純正アクセサリーがある。上部やサイドに取り付けるリフレクター、LEDライトを内蔵した底蓋、ネオプレーンでできた各種ケースなどだ。虫除け効果があるシトロネラ成分を配合したスペアキャンドルなんてのもある。サードパーティーからは、オイルランタン化するためのパーツも提供されている。国内では雪丘工房さんなんかが有名どころであろうか。

本題はグッズ論ではなかった──。阪神淡路大震災を経験した方に聞いた話だが、被災の現場で思いのほか役立った道具の1つに、ハンマー(金槌)やバール(釘抜き)があったという。いざという時にモノを壊したりこじ開けたりする時に力を発揮したらしい。いずれも大きめのものがお勧めとのこと。我が家には適当なものがなかったので、とりあえず小型のバール付きトンカチを1つザックに忍ばせておいた。いずれにせよ、避難用ザックを持ち出す日が来ないことを切に願うばかりだ。(by ドングリ)

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