小細工が好きなたちなので、かつてはエサ釣り用の川虫入れや、テンカラの毛鉤ケースなどを竹を切り出して自作しておりました。シーズンオフ、一般河川で釣りができない寂しさを紛らすにはもってこいの作業だったのです。
そうそう、カヤの原木から渓流ダモを作ったこともありました。丸い枠となるのは、対生する2本の枝。それを考慮に入れて「Tの字」型に適当な部分を切り出します。樹皮を剥いた後、ハンドバーナーとかやかんの蒸気など適度な熱を加えながら枝を徐々に曲げていき、先端部を連結して枠を整形。表面を紙やすりなどで滑らかにした後、カシューを幾重にも塗っていくと輝きを増してそれっぽい仕上がりになります。ネットを編むのは面倒だったので、市販品を流用しました。
最初はオールウッドのタモ枠だったんですが、自作派の人々がよくやっているようにグリップエンドに鹿の角をあしらいたいとの願望が…。でも、都合の良い大きさの角って、そう簡単に手に入らないんですよね。その時は、角の先端部を使ったキーホルダーを売っているサイトをネットで見つけてオーダー。運良くサイズがぴったりだったので、思い通りに仕上げることができました。
エサ釣り用の仕掛け巻きを作ったり、クラフトナイフのグリップにしたりと、鹿の角の用途は色々と思いつくのですが、調達が簡単にはいかないのです。形や色の良いやつを、手軽かつ安価に手に入れる方法なないものか…。そこで思い出したのが、北海道在住の親戚筋にハンティングを趣味にしている叔父がいるってこと。ナ~イス。
早速、相談を持ちかけたら「よっしゃ、任せとけ」の心強い一言。聞けば、最近はとみにエゾ鹿が増えて農地などに被害をもたらし、自治体からの駆除要請も多いのだとか。
──そして、とある日。我が家にでかい荷物がどーんと到着しました。開梱してビックリ! てっきり、適当な大きさにカットした状態で送られてくると思っていたら、頭蓋骨の一部も残した“飾り物仕様”じゃないですか。家族一同、口をあんぐり。「狭苦しい家に、また余計なものを持ち込んで…」という冷たい視線を浴びながらもカットするのが忍びなく、目下のところは部屋の片隅に鎮座させております。
ともかく送ってくれた叔父にお礼の電話をすると「何だったら、今度は鹿のコンプリートスキン(1頭分の毛皮)も送ってやるぞ」とのこと。カディスのウイングなんかに使えるんだろうけど、どんだけ巻いても消費しきれないんだろうなぁ。持て余すこと間違いなし。とりあえずは丁重にお断り申し上げました。