もしかして、私がメンバーのエントリー第1号だろうか? ちなみに私はサイト上で「ドングリ」を名乗ることになった。ネーミングの由来は後日の話題に譲るとして、以後よろしくであります。
さて、待ちこがれていた渓流シーズン2011のスタートである。個人的に、今年のテーマは「フライフィッシング」。しばしの間をおいて渓流釣りに本格復帰したのは2008年のこと。最初の2年は餌釣りで過ごし、昨年はテンカラに挑戦してみた。そして調子に乗って、今シーズンはフライなのである。
第1回の釣行は、さる3月5日(土)のこと。昨年のスタートと同じく山梨県の日川だ。いや~、それにしても寒かった! 朝からスカっと晴れ渡ったのだけど、R20の景徳院入口から葛折りの山道を上るに従って、どんどん空気が冷たくなってくる。しばらく行って、いつものスペースに車を止めてみると、陽が差し込まない谷にはまだ雪が残っているではないか。川には、そこかしこに薄氷も張っている。標高1000mを超える山間部に本格的な春が訪れるのは、まだまだ先のようだ。
それでも、久しぶりに川に来ると自然に心が躍ってしまう。まだ慣れない手つきでロッドを継ぎ、リールをセット。おニューのフライラインをガイドに1つずつ通していくと、なんだか自然に顔がほころぶ。リーダーとティペットを結び終えて、何とか体制が整った。お魚さん達はこの冷たい水の中でまだ底近くに沈んでいるはず。今日はニンフに徹しよう…。まずはビーズヘッド付きのヘアーズイヤーを結んでみる。さて、どんな1日になるか。
午前9時。吐く息は真っ白だ。リールのラチェット音を谷に響かせながらラインを引き出し、記念すべき第1投。オレンジ色のスープラDT3番はループを描き、狙いを定めた淵の巻き返しに静かにフライを運んでいった。すぐに沈み始めたビーズヘッドは水中でキラリと光を放つ。とその時、底近くから大きな黒い影が猛スピードで浮上したかと思うと…。いかんいかん、妄想が先走ってしまった。こんなイメージだけは頭に出来上がっていたのだけど、現実はかなり厳しいのであった。
冬枯れのこの季節、渓に立った位置からの見通しは新緑以降のそれに比べてすこぶる良い。そのせいで忘れていたけれど、この流域では、流れの上まで木の枝が張り出しているエリアが多いのだ。第1投、いや、0.5投というべきか。バックキャストがそんな枝の1本に絡んでしまった。まじかよー。やむなくフライラインをつかんでゆっくり引っ張ると…プッツン。リーダーとティペットの結び目から切れてしまった。よりによって、ちょっとお高めのタングステンビーズを使った毛鉤は、1滴の水に触れることなくロストの運命となった。
気を取り直し、もう1度ティペットをリーダーに継ぎ足す。覚えてきたダブルサージェントノットを試みるも、なかなか輪の中を糸が通らない。手が冷えて細かい作業が思うようにいかないのだ。何度か繰り返すうちに、やっと上手くいった。結び目をツバで濡らし、力一杯に締め込む。後は、クリッパーで余分をカットすれば完了である…。ん? あちゃー、こっちを切っちゃいかんのだよ。せっかく結んだはずのティペットが足下に落ちる。
先走る気持ちとは裏腹に、いつまで経っても釣りにならない。落ち着け。今度は岩に腰を下ろし、ゆっくりじっくり準備を進める。やっとティペットがつながった。後はフライを結べばよいのだが、これも一筋縄じゃいかない。フロロ7Xの先端を右手でつまみ、左手の親指と人差し指に挟んだニンフのアイに通す。通れ、通ってくれ。この寒さで我が目の水晶体も弾性を失っているのか。いや、どう考えても単なる老眼である。やっと通ったと思って安堵したら、フライがポロリと落ちた。どうやら錯覚だったらしい。小石が散らばる足下を探してみるが、フライは一向に見つからない。ぐったりと力が抜ける。オレは何しに来ているのか。
──午前中の3時間だけで、同じような失態を何度繰り返したことだろう。やっとキャストできる状態になっても、一連のシステムが長続きすることは滅多になかった。狙うポイントには落ちない一方で、気をつけなければと注意する障害物にはドンピシャで命中する。上空の枝、背後の枝、対岸の枝…。持ってきたフライの多くが、無情にも枯れ枝の飾りと化してしまった。薄紅色のフライを巻いてきていれば、さしずめ花咲かの翁である。できるだけ回収はしたけれど、いくつかは枝に残ったままになってしまった。自然環境にダメージを与えない釣り師になるには、まだまだ鍛錬が必要なことを思い知らされたのであった。(by ドングリ)