フローズンニンフ

今年になって始めたフライフィッシング。最初の悪戦苦闘ぶりは前回のエントリーで触れた通りだが、その後は一体どうなったか…。とにもかくにも、未熟がゆえに木々が覆い被さることなく開けた空間を選ばなくてはキャスティングもままならない。あたりをキョロキョロと見渡し、トラブルが少なそうな場所に移動しては「今日は練習!」と割り切ってロッドを振ってみる。

事前に自宅近くの公園で練習した時は、ラインはそれなりの方向と距離にコントロールできていた気がしていた。ただしその時、リーダーシステムの先に結んだのは、ごく軽いフライだった(さらに危険回避のためにフックは途中で切断)。それが今回、ニンフのルースニングということで、フライがそこそこ重いのに加えて、発泡素材のインディケータまで装着している。この差が意外にも大きいように思えてきた。ド素人のくせにリーダーとティペット合わせて15ftというのも無謀だったかも!? 狭いループで…なんて考えているとロクなことがない。何というか、上から大きな放物線を描く感じでフライを落とすようなキャスティングが結局は安定するようだ。

それにしても寒い。何度かキャスティングすると、リーダーのバット部を中心に、水滴が凍り付いて数珠のようになってしまう。フライも同様にカチコチだ。何もケアせずにいると、フライ全体を氷が包み込む。その昔、クリア樹脂の中に花を埋め込んだクルマ用のシフトノブがあったが(古っ!)、それをそのままミニチュアにしたような有り様だ。こうして付着する氷を手で除きながら、たどたどしいロッドさばきを続ける。

練習に徹するとはいえ、何の反応もない状況で同じ場所に佇むのは飽きるものだ。とぼとぼ上流に向かうと、また木の枝が張り出したトンネル状のエリアにやってきてしまった。無理にキャスティングするのは諦め、アウトリガーというか、要はミャク釣りのようなスタイルで岩陰や淵の肩を探ってみる。粘らずに軽くやり過ごしていた矢先、小場所でインディケータが妙な動きをした。ロッドを軽くしゃくると、わずかな手応えがあった。すぐに水面に姿を現したのは15cmに満たないチビアマゴだ。突然の出来事で慌ててしまった。背中にぶらさがるランディングネットを探ることに意識が向いた瞬間、そいつはピシャと水しぶきをあげて流れに戻っていってしまった。残念! 仏頂面でヘタな釣りを続ける姿に同情し、魚がいることだけは知らせておこうとしてくれたのか…。

後にも先にも、魚信を感じたのはこの1回のみ。いきなりボウズの洗礼をくらってしまった。でも、体に残ったのは虚脱感ではなく、心地よい疲れだった。いや、負け惜しみではなく本当に。上達への道はまだまだ遠いけれど、目標があるってことは素晴らしい。いつの日かきっと、思い描いたような釣りができるさ。そう自分に言い聞かせながらふと空を見上げると、稜線の向こうに綺麗な夕焼けが広がっていた。(by ドングリ)

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