う~む、またか──。ここはいるでしょという場所にフライを流し、思惑通りに魚を掛けても、それが“小物”である感触がすぐに伝わってきます。それは6月11日に鶴川に出かけた時のこと。反応はあるのは嬉しいのですが、どれもこれも15cmに満たないヤマメばかり。活躍の場がなく、乾いたままのランディングネットが背中で揺れています。
水が温み、周りには水生昆虫が活発にうごめいる様子。魚にとってのエサは豊富に流れているに違いありません。そうした状況下、いくら食べてもすぐにお腹が減る若者は貪欲にエサを追い、酸いも甘いも十分に経験した大人は冷ややかに眺めているという人間模様、いや魚模様が展開されているのでしょうか。
この日は、フライやルアー、エサ釣りと色々なアングラーに会いましたが、皆一様に「小さいのしか釣れない」と渋い表情です。鶴川の主だった入渓路には、「15センチ以下のヤマメ・イワナを釣りますと釣り具一式没収します。注意して下さい」〈桂川漁協上野原支部・上野原警察署〉という立て看板が掲示されており、これを真に受けるなら、誰もが身ぐるみ剥がされちゃってますよ。
大きくは3つのエリアを移動してみましたが状況はさして変わらず。例年より水位が低い中、良型が潜みそうな場所を探ってみるものの、なかなか姿を現してはくれません。人間から見た一級ポイントって、魚にとっては危険区域ってことなのでしょう。
結局は、午後に入った初戸集落近くの流れから出た22cmのヤマメが、この日の最大サイズ。諦め気分に陥りがちですが、しつこく流していると、やる気を示す先輩ヤマメが稀にいるので気は抜けないんですよね。ちなみに、何の変哲もないフラットな浅場で、14番のエルクヘアカディスを喰ってきました。
そのほか、止水に近い細長いエリアを遠くから狙った時、深みから一直線に出てきたヤツはそれなりの大きさがあったはずですが、無念のバラし(今でも残像が…)。一筋縄ではいかない鶴川ヤマメの学習レベルをまた一つ押し上げることに貢献しちゃいました。
元気なチビヤマメたちがエサを貪って、あとふた回りほど育った末に相手をしてくれるなら面白い川になるのになあ。まぁ実際には育ったのもいて、その多くは怪しいエサには近づかないという自己防衛能力をすでに身に着けているというのが正しい見方なのかもしれません。そんな狡猾ヤマメをもってしても、魔が差してしまうような攻め方ってどんなんでしょ? 彼らには太刀打ちできないことが分かっていても、当歳魚の成長を見ることができるので、つい足が向いてしまう鶴川なのでありました。