週末も仕事を引きずって、やっと目処がついたのは日曜日の夜のこと。労をねぎらってか、日頃の残業続きを哀れんでか、「月曜は必ず代休を取得せよ」との命が下ったのでありました。
帰宅した時点ですでに深夜0時過ぎ。さすがに疲れが溜まっていて惰眠を貪りたい気持ちもありましたが、天気は良さそうだし、次の週末からは海外出張が控えているので、ここは鞭打って釣りに出かけるとしますか。
毎度の鹿留林道に到着したのは7時前のことでした。スカッと晴れて空気は爽やか。平日とあって釣り人の姿はなく、選択の自由が与えられている分、どこから入渓するか迷ってしまいます。今日はいつもより上流に入るとしようかな。
──15時の納竿までの間、ヤマメ、イワナが適度に相手をしてくれて、楽しい釣りとなりました。時間を気にすることなく、あるいは他の釣り人の影を気にすることなく、マイペースでロッドを振ったのは随分久しぶりに感じます。以下に、記憶に残った出来事を3つほど。
◆支流筋にある小規模な堰堤下のプール。最初に20センチほどのヤマメが釣れて一息入れていると、奥の方でライズがありました。しばし観察したところ、やる気のある1匹があちこち移動しながら喰い漁っているようです。これを取るのは簡単では?
しかし、タイミングが悪いのか、フライを見切っているのか、無視を決め込まれます。サイズや色目を変えたり、時には誘いをかけてもまるでダメで、しまいにはフライの真横でライズされる始末。手に負えんなぁと諦めかけて結んだクリップルにやっと食い付いた!
30分ほどの試行錯誤の末にランディングに至ったのは丸々と太ったヤマメでした…ん? でも斑点の入り方、特に腹回りの模様に違和感が。ひょっとしてニジマスとの交雑種なんだろうか。それはともかく、ライズの主に粘り勝ちできたのは快感です。
◆初めて入った上流域の沢。しばし進んだ先の落ち込みに大きめのテレストリアルを流した所、チビヤマメのチャブっというミスバイトがありました。核心部でこの反応では望み薄か。期待がしぼみつつも繰り返しキャストしていたら、岩盤付近からいきなり黒い影が走ってフライをひったくられたのです。とっさに合わせたら確かな手応え。お腹周りのオレンジ色が鮮やかなイワナが目の前でジャンプして身をくねらせました。
で、でかい! そいつは強烈な勢いで反抗開始。岩や流木が複雑に絡んだ淵奥へと逃走を企て、こちらが竿にテンションを感じているのも束の間、あっさりと7Xのティペットを切られました。岩角にティペットが擦れたのかもしれません。綱引きで力が拮抗する間もなく一気に引きずり倒され勝負がつく──。そんな形容がぴったりなほどの一瞬の出来事でした。
よく覚えていなけれど、天を仰ぎながら意味不明の雄叫びを上げたような…。完敗とはいえ悔しい。しばらく、その場に立ち尽くすことしかできなかったのでありました。
◆変化の乏しい陽の当たるチャラ瀬エリア。あえて竿を出さなくとも先々に魅力的な渓相が見えるので、いつも足早にスルーしています。が、よくよく見ると、張り出した樹の陰になって少しだけ怪しさを感じるポイントが数カ所あるんですよね。
時間と気持ちに余裕がある日は、こんな所も丹念に攻める気持ちが芽生えます。そっと近づいて慎重にキャストすると…一発! 24センチと思っていた以上に大きなヤマメでした。いわゆる竿抜けになっている場所なんでしょうね。
この日は総じて、ここは出るでしょというポイントで素直に釣れる展開に恵まれたので、心地よい一日となりました(バラすことも多々あったけど…)。たまには平日釣行も悪くない、そう感じたプレミアムマンデーでありました。