家族4人の中で渓流釣りを嗜むのは残念ながら私だけ。そんな状況下、半日でもフリーとなれば川に出かけ、家にいてもフライを巻くか録画した釣り番組を見るかという生活を続けていては、さすがに旗色も悪くなってきた今日このごろです。家人と休みが重なった際に、釣りに出かけると言い出す敷居は高まるばかり…。
一人でも同志がいれば、パワーバランスも変わってくるんじゃなかろうか!? 邪心ともども前々から考えていたのが、長男を“こちら側”に引き入れてしまおうという策略です。釣りにハマった暁、H&C諸氏の了解を得てメンバー入りという展開になれば、こちらとしても動きやすいですからね。
「一緒に釣りでも行く? 森林浴するだけでもリフレッシュできるしさ」──。彼の日頃のオーバーワークを心配する家人に慮るというのは体の良い言い訳であり、要は身近に理解者がほしいという我欲のままのお誘いでしたが、それでも二つ返事で受け入れられ、たまたま二人の都合が噛み合った13日の午前に出かけることとなりました。
目指すは通い慣れた鹿留川。お盆休みのこの時期、帰省や観光で中央道は行きも帰りもごった返すことが見込まれます。時間帯によっては30km超の渋滞になるなんて予測も。混雑を少しでも避けるには早出&早帰りしかありません。朝4時に家を出発し、あまり無理せず昼過ぎには上がるという段取りで臨みます。
彼は幼少期にルアーフィッシングをかじった程度で、ここ10年以上も自然渓流での釣り経験はなし。しかも、私の道具を貸すとなると、フライかテンカラしかなく、「毛鉤釣り」の一択です。ごちゃごちゃ説明せずに済み、トラブルが少ない(あってもリカバーしやすい)と思われることから、この日はテンカラで様子をみることにしました。
6時過ぎに開けた河原に降り立ち、まずはキャスティングや毛鉤の結び方などの基本を説明。後は、実際にやってみて体で覚えるしかありません。元来、アウトドア派なので、応用や機転は効く方でしょう。その前の一週間である程度の雨が降ったらしく、コンディションはまずまずです。
ラインが飛ばなかったり、毛鉤をひっかけたり、沢歩きにてこずったり…。さすがに最初の3時間ほどは、思うような釣りになりませんでした。当然、魚の気配を感じることも皆無です。嫌気がさしてもおかしくない状況ではありますが、いつもトラブル対処に奔走するPMという仕事柄かメンタルは強いようで、根気よく竿を振っております。
おにぎりで簡単な食事を済ませて小休止した後、再び川へ。次第にキャスティングの要領をつかんできたようで竿尻より1mほど長いライン(ハリス込みで5mほど)が綺麗に伸びるようになって来ました。あとはポイントの読み方と、アワセの入れ方が噛み合えば、釣れちゃうのでは??
毛鉤釣りにハマるか否かは、初日の印象が左右するものです。今日はとにかく一匹釣ってもらわなければ。まずまずのところまで来ているので、どうせなら、魚が浮いてきて食らいつく瞬間を目の当たりにした方が刺激的で印象的かもしれません。そこで、それまでのソフトハックル系の毛鉤からEHCに結び替え、ドライテンカラへとチェンジです。
──とある小堰堤から続く流れ。白泡が切れるあたりに毛鉤が上手く落ちて水面を流れ始めた刹那、水面が弾けました。アワセも上手く決まりフッキング! 背後から一部始終を眺めていた私も思わず駆け寄った矢先、20㎝ほどのヤマメが激しく首を振って、流れに戻っていきました。 痛恨のバラシ…バーブレスフックだったからでしょうか。残念!
何匹もたまるポイントなのでしばし粘ってみたけれど、後は続かず。それでも、その手応えでモチベーションが上がったようで、沢筋を進む足取りが軽快さを増します。やがて目の前に現れた、怪しさいっぱいの小さな淀み。毛鉤がゆっくりと流れ、沈み石の脇に差し掛かった所で、再び黒い影が飛び出しました。瞬時に煽ったラインの先に、抵抗する渓魚の姿があります。今度こそ慎重に手繰り寄せて…綺麗なイワナがネットに収まりました。ふぅ〜。
待望の一匹に歓喜し、しばしの撮影タイム。まだ13時前で、さらに奥へという欲が湧くところだけど、折しも黒い雨雲も湧いてきたので、ここが退き時と渓を上がることにしました。その判断は間違っていなかったようで、帰り支度を整えてクルマに乗り込んだ途端に土砂降りとなり、渋滞する中央道に乗ってからも雨脚が弱まることはありませんでした。
結局、自分はほとんど釣りらしい釣りをしなかったけれど、それなりに満足した半日。これを機に身近な釣り仲間が増えるとよいのだが…。もっとも、彼も仕事が忙しいようで今季はかなり厳しいらしい。ここは気長に待つしかないかな。