ほぼ完徹のまま仕事が一段落したのは9月29日(金)の早朝のことです。その成果物をクライアントがチェックする兼ね合いで、少なくとも週明けまでは動きがないことを関係者にメールで伝えてホッと一息。私はといえば、権利を行使せぬまま残していた遅めの夏休みを頂くことにして、通勤ラッシュに逆らうように帰途につきました。
自宅に戻ったのは午前9時過ぎのこと。そのまま惰眠を貪るというのも充分に誘惑的ではありましたが、禁漁間近というタイミングにおいて寝室に直行するわけにはいきません。冷水シャワーで睡魔と決別し、無理せぬ範囲で毎度の渓で遊んで来ることにしました。先の日曜が今季ラスト釣行かなと思っていたけれど、仕事の成り行きから再訪のチャンス到来です。
爽やかな秋晴れの中をゆっくりとクルマを走らせ、鹿留林道のいつもの駐車スペースに到着したのは11時半のことでした。平日とはいえ、ラストスパートを図る釣り人が何人かはいるだろうと思っていましたが…どうやら今日は貸切のようです。ラッキー!
天岩橋〜二段堰堤のちょっと上あたりまでのエリアをマイペースで釣り上がります。仕事明けの疲れもあるので、3時間もロッドを振ることができれば心身ともに満足できることでしょう。さてさて、思いがけなく実現したプレミアムフライデー(←もはや死語のような気も…)釣行の展開はいかに?
──簡単には釣らせてもらえないけれど、10センチに満たないスーパーチビから22センチほどのメタボ系まで、ヤマメが適度に顔を出します。スルーしそうな小場所で3匹連続で出たかと思えば、実績ある好ポイントで音沙汰がなかったりと、首を傾げたくなる場面も多々ありながら、とりあえずはツ抜け達成で大満足。もっとも、25センチ超には最後まで出会えませんでしたが。
そういえば、この日2匹めとしてランディングしたヤマメ、何やらタコ糸のようなものを引きずっているなと思ってじっくり見ると、その正体はハリガネムシでした。過去にも、この時期に何度か同じような個体を見かけたことがあります。この細長い生物は、どうして今、ヤマメの腸内から出てきたのでしょう?
<カマドウマに寄生してしばし安穏とした暮らしをしていた彼。川へ戻る本能が働いたのをトリガーに主を操って入水させたまではよかったものの、そいつごとヤマメに捕食されて、トラブル発生。子孫を残すには、どうしても外界に脱出しなければと暗闇をもがくうちに腸の末端に出口が見つかった──>
本当のところ、どんな経緯でこのヤマメと関わりを持つことになったのかを知る由はありません(ストマックポンプを使えば何か手がかりがあったかな)。とりあえずは双方のために?引き離してさしあげました。いずれにせよ、川の周囲でさまざまな事象が絡み合って成している生態系の一端を垣間見た気がしました。
年券を手にして解禁から何度も足を運んだこの渓。釣り人や昆虫採集家など地元のみらなず県外からも訪れる人々と知り合いになれたし、シカ、タヌキ、クマといった動物にも巡り会いました。自分もまた、清らかな流れのほとりにせっせと集うone of them なのであります。また来季、どんな出来事があるんだろう? そんな愉しみを胸に、鹿留林道を後にしたのでした。