ここは、群馬県上野村「ふれあい館」の裏手にある流れ。ドライには反応がないのでソフトハックル系に替えて水面下の層を流してみたら、水中に何やら不穏な動きがありました。どうやら眼前の沈み石の脇にヤツが潜んでいるようです。
2投、3投…微妙にコースを変えながらキャストを繰り返していると、またもや水中で赤紫っぽい魚影がギラリと反転。やや遅合わせ気味にロッドを立てると、ズンっという手応えがありました。
その直後に水面を割って姿を露わにしたのは紛れもないハコスチです。一気に上流に走ったのを制止しようとラインを掴む左手に力を込めると、あっという間にロッドがのされ、次の瞬間にはティペットがブチ切られておりました。
先方も驚いたのか、それとも君なんぞお呼びじゃないとの意思表示だったのか、自由の身となった後もパワーを見せつけるかのように3度ほど派手なジャンプを繰り返して流れに戻って行きました。私のみらなず近くにいた釣り人も一様に唖然とした次第です。
その後も一度だけフッキングしたけれど、やはりフライの結び目近くでブレークしてものにできず。5Xのリーダーとフロロティペットでも、やり取り次第でランディングできると考えていたのが甘かったかな。結局は、リールファイトに持ち込む間もなく、ケリをつけられました。残念。
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10月8日の日曜日。富岡製糸場の周辺を観光したいという家族と共にドライブに出かけました。もっとも、私は過去に2度ほど訪ねたことがあるので夕方まで別行動させてもらうことで話がついていたのです。ってことで、さらに独り30分ほどクルマを走らせてやってきたのが上野村であります。
前日の7日から「神流川オフシーズンニジマス釣り場」が開設されることを事前に聞きつけ、それを前提に今回のドライブ計画を画策していたことは言うまでもありません。それとは別に、仕事で知り合った渓流釣りフリークの方からも「オープン早々にハコスチに挑みに行きましょうよ」とお誘いを受けていて、すべてうまくまとまって当日がやってきました。
現地集合した後に受付を済ませ、2人して意気揚々と川に立ったのでありますが…約6時間のチャレンジの結果は先に触れたような惨敗に終わりました。簡単に釣れるシロモノではないらしく、周囲を見渡しても皆さん苦戦されてます。放流直後で流れにまだ馴染んでおらず活性がなかなか上がらなかったという側面もあったかもしれません。
そうした状況下でもフライで着実にものにしている方がおり、よく見ると、これまで2度ほどレクチャーを受けたことのあるF FプロのS氏じゃないですか。足元に寄ってからなお力強く抵抗するモンスターを限界近くまでしなるロッドでランディングする様子は見応えたっぷりでした。聞くと3Xのティペットをお使いとのこと。最太で5Xしか持参していなかった自分の認識が甘かったことを痛感しました。
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ちなみにハコスチなるネーミングは、旧箱島養鱒センター系のニジマス(メス)とスチールヘッド系(オス)を交配させたことに由来するらしい。遊漁用に開発されたという品種は、県下の水産試験場や漁業協同組合など関係組織が一丸となって地域活性化に取り組んでいる象徴なのかもしれません。
引き締まった体躯の内に秘めた闘争心や溢れるスタミナ、こちらの動きを見透かすしたたかさなどを総合した格闘力は、さしずめヘビー級のファイターのようにも映ります。個人的には“箱”にもかけて、「ボクサートラウト(Boxer Trout)」と呼ぶ方がしっくりくるような…。
いずれにせよ、準備万端整えてリベンジに来なくては。次回こそ、フッキング直後の瞬殺ワザをかわし、少なくとも“リング上”の持久戦に持ち込めるよう、せっせとイメージトレーニングに勤しみたいと思います。