老視は進む一方で、タイイング時なんぞはバイスのジョーの先端あたりにうまくピントが合わなくて苦慮します。やむなく、ハズキルーペのような拡大鏡、あるいは老眼鏡の類を着用するわけですが、最近はもの忘れも多くなって、いざ必要とする時に「あれ、どこに置いたっけ?」なんてことになりがちです。
という背景から、タイイングデスクに据え置き型のルーペを設えようと思い立ちました。その昔、エンフレンというメーカーが「EF-200」という型番のLED照明付きデスクルーペを市場展開していて、今思えばこれがベストなのでありますが、残念ながら製造中止で手に入りません。買っておけばよかった…。
無いもののねだりしてもしょうがないので、別の品を物色です。とりあえず照明は別にあるので一体型でなくてもOK。レンズが大きめで、位置の微調整がしやすいフレキシブルアーム付きのもの、という条件で探すと、ビクセンさんの「Vixen ルーペ ワイドフレンネル」が目に留まりました。
1.8倍のレンズは193×140mmと大型。素材はアクリルで、アームやベース部なども加えた本体重量は360グラムと軽く仕上がっています。同一と思える製品が、ケンコー・トキナーはじめ他のメーカーさんからも出ているので、ある製造元が複数にOEMしているのかもしれませんね。
名前の通りフランネル(フレネル、Fresnel)タイプのレンズを採用しています。同心円状に細かく並ぶギザギザ模様がクリアな視界の邪魔になる? 設置する角度によっては室内照明の反射が気になったりして? ──懸念事項はあるけれど「大きくて軽い(薄い)レンズ」にするには致し方ないこと。歪みの少ない高性能な非球面ワイドレンズとなると値段も跳ね上がりますからね。
タイイングに集中しても目が疲れにくいかどうかは、実際に使ってみないと何とも言えません。ってなことで買ってみました。たまたま新宿に行く用事があって、西口のヨドバシカメラ(カメラ総合館の地下一階)に現物があったのです。4240円でございました。
バイスの左手前あたりに台座を置き、作業する手が干渉しにくいようにフレキシブルアームを適当に折り曲げながらレンズ位置を調整。ベストポジションはおいおい見つけるとして、まずは1本巻いてみると…(老眼ゆえにピント調整に難儀していた)フックがくっきりと、しかも拡大されて見えるのって快適ですね。私の部屋の場合、シーリングライトがレンズ表面に反射するのが多少気になりましたが、黒いシートで簡単なシェードを作ったら解消されました。
作業中はフックのあたりを凝視することになるので、周辺のゆがみやフレネルレンズ特有の溝模様はさほど気になりません。まぁ、このあたりはレンズの品質や性能うんぬんではなくて、人の視覚やそれに連動する制御系が柔軟にできているということでしょうけれど。ある程度の品質を備えたルーペを使えば細かい手作業が楽になるという、ごく当たり前の話に帰結するのでした。
タイイングをより快適にするならば、あとはデスクライトの照射角の改善かな。所有している製品は、アーム関節の構造からLED光源部の可動域(方向)が限られ、バイスのほぼ真上から照らしている状況。細かいことを言うと、指先やツールの影ができて見えにくくなる瞬間があるのです。2灯照明にして、左右の斜め上方からそれぞれライトを当てるようにすればマシになるんじゃなかろうか。これはまた、おいおい試してみたいと思います。