清冽な流れといい空の近さといい、日川は好みのフィールドの1つです。こんな場所で出会う人は、同志の釣り人だけだろうなんて思い込みもあったんですが、そうでもないんですね。実は虫屋さん(昆虫採集家の方々)にとっても格好のエリアらしい。
いつぞやは、年配のオジサンが捕虫網を振っているのを見かけたので興味本位で聞いてみたら、エルタテハの生態観察に来ているとのこと。ちなみにエルタテハって、後翅の裏に「L字」の紋があることが名前の由来になっている蝶です。どちらかというと地味な感じの種ですが、学名には「samurai」という凛々しい文字も含まれてるんですよ。
また先日の7月9日には、数人の若者(といっても推定30代?)が川原の空き地にやってきて、塩ビパイプを加工した二畳ほどのフレームや発電機などをクルマから取り出し始めました。こちらにも尋ねてみたところ、ミヤマクワガタを主なターゲットとした採集なんだとか。夜間、フレームに張った白地のシートにライトを当て、光に集まる“お目当て”をゲットとするという寸法。いわゆる灯火採集(ライトトラップ)というやつですね。実は彼らに会うのは昨シーズンに続いて2度めのことです。
かくいう私も、少年時代は昆虫(主に蝶)に魅せられていた時期があります。当時は北海道に住んでおり、オオイチモンジというタテハチョウ科の大型種や、ミドリシジミ科に属する小型で煌びやかな種を追ってました。渋谷・宮益坂上にある昆虫採集グッズの専門店、志賀昆虫普及社には通販で相当お世話になったし、月刊むしという専門誌を読みあさっていた時期もあったっけ。
そんなこんなで、採集家の姿を見ると何やら懐かしさを感じるし、釣行先で見かける昆虫に見入ってしまうこともしばしばです。北海道では珍種とされたものも、関東甲信越ではごく普通に生息して、時折ドキっとしたりもしてます。
もっとも、ぱっと見て名前を言い当てられるのは蝶ばかり。渓流釣り、とりわけフライフィッシングで存在感を増す、カゲロウやカワゲラ、トビケラなどの水生昆虫については、種類も生態もさっぱりです。こんなんじゃいかんだろうと思い立ち、書店で「フライマンのための水生昆虫入門」という本を買ってみました。こうして、周辺知識にばかり目が向いて、腕を磨くという肝心なことを怠っている今日このごろなのでした。