部屋の片隅に、放置されて久しい帽子が転がってます。
KAVUの「CHILLBA(チルバ)」。日本の菅笠というかベトナムのノンラーというか…。真上から見るとまん丸、真横から見ると二等辺三角形。つまり円錐型をしたユニークなデザインが特徴です。
テンカラを中心に釣りをしていた頃、渓の翁こと瀬畑雄三氏が笠を愛用しているのに感化され、“あの感じ”を今風にアレンジしたらどうなるかを志向して買ったのでした。
秀山荘の「ClimbZone」、プロモンテの「ザ・沢パン」、ファイントラックの「フラッドラッシュ」など国産沢登り系で身を固め、とどめに「チルバ」を被れば決まり! つばの裏には、翁よろしくフライパッチなどを付けちゃったりして。
とある日、そんな組み合わせで鶴川釣行に臨んだのでありますよ。で、顛末はというと…。「ムフフ」という幻想は、「ウムム」という落胆に終わってしまいました。
似合わん! 頭の上にちょこんと乗っかった感じで収まりが悪く、全体としてのバランスが変ちくりん。何つーか、案山子? 大道芸人? おでん?──無様な姿に、思わず自分で自分を笑ってしまいました。アマゴも開いた口がふさがらなかったのか、この日はバレが多かったなぁ。
どうやら、チルバが悪いわけじゃなさそうです。それは秋の京都へ紅葉見物に行った時のこと。嵐山あたりで人力車を引いていたイケメン君が同じのを被ってたのですが、それがもうバッチリ決まっている。同じ人間がかぶって、どうしてこうも違う結果になるんでしょう。
所詮、空まねや背伸びは透けて見えるもの。自分をわきまえ、身の丈に合ったものを選び、とことん使い倒す。謙虚さと愛着の心があって、はじめて体の一部のようにしっくりくるということでしょうか。──釣りにも、まったく同じことが言えそうです。と自戒を込めて。