A: 「下流は蜘蛛の巣ばっか。そっちは釣れた?」
B: 「確かに雲が厚いなぁ。これじゃ雨が止まねぇぞ」
A: 「えー! アマゴとヤマメだと?」
B: 「言わないこっちゃない。2時までメシ休憩だな」
A: 「はぁ。イワナ? ニジマス?」
B: 「“雨後の荒食い”に期待しますか」
A: 「何だ、ウグイかよー」
これは極端な例ですが、渓流では瀬音に声がかき消され、ちょっと離れただけでもコミュニケーションがちぐはぐになってしまいます。トランシーバーを用意したこともあるのですが、操作が面倒だし水没させるリスクもあるので、結局使わなくなってしまいました。
会話がままならない状況下で、どうやって的確な意思疎通を図るか。安全な釣行、臨機応変な計画変更、そして釣果自慢…。相手に正確な情報を伝えることはとても重要です。
「お約束のポーズ」を決めておけば、ボディランゲージでいけるんじゃない? ──そんな話題で盛り上がったのは、前回釣行の帰り道、談合坂SAで皆で食事していた時のことです。
まずは魚種をどう伝えるか。両腕を大きく使いながら…
- ヤマメ: 頭の上に三角を形作って「山」
- イワナ: 重いモノを持ち上げる仕草で「岩」
- アマゴ: 傘をさす様子を再現して「雨」
心地よい疲れでハイテンションになっていたのでしょう。メンバーからは次々と奇抜なアイデアが出てきます。他には、「竿が折れました」「餌をぶちまけちゃいました」「釣れ過ぎて笑いが止まりません」などなど。
そんな折、「でもさ。竿持ってるんだし、片手で出来なきゃいけないんじゃないの?」とジーザスが鋭い指摘。そうか、おっしゃる通り。
「つーか、魚うんぬんより『深いから徒渉に注意!』とか、もっと先に決めるべきジェスチャーがあると思うんだよね」との意見も。ごもっともでありますよ。
ということで、このアイデアは一時ペンディング。釣り業界のデファクトスタンダードにもなるような? 覚えやすくて伝えやすいジェスチャーを練り直そうということに落ち着きました。冗談抜きに、渓流で通用する何らかのコミュニケーション術は必要だと真面目に考えています。
白紙に戻しつつも、暫定案として我々の記憶に焼き付いたジェスチャーが1つだけあります。まったくもって傍流なのですが、それはニジマスが釣れた時の宣言。腕高らかに虹の弧を宙で描くというものです。人呼んで“栄光の架け橋”サイン。さあて、誰が真っ先にこれを使うことになるのか。この週末は、今シーズンにニジマスの実績がある某所に出かける予定です。