そして僕は途方に暮れる

You must lose a fly to catch a trout.
──大きな目的を達するには、小さな犠牲を覚悟せよ

言われるまでもなく、どんだけフライをロストしてもいいから釣れてくれよとの思いで臨んだ日原川釣行だったんですけどね…またしても残念な結果に終わってしまいました。

それにしても、ネットで検索してみると、世界には「釣り」をモチーフにした諺や格言がたくさんあって興味が引かれます。その辺はまたおいおいに。

さてこの日、午前に入渓したのは、バス停「不老」近くのエリアです。先の豪雨の影響で恐れていた「濁り」は徐々に落ち着きつつありましたが、「水量」がすごいことになってました。

以前に同じ場所に入った時、何の苦もなく対岸に渡れたはずのポイントは一変していました。徒渉ルートを探して踏み出してみるものの、あと1歩が進めません。ダメだこりゃ。結局、200mに満たない片岸だけを行きつ戻りつして竿を出してみましたが、まったく釣りになりません。嫌な予感…。

ランチを挟んだ午後は下流域に移動し、多摩川本流との出会い~石灰石工場の脇あたりを探ってみました。初めてやってきたこの場所、上空が開けていてフライのキャスティング練習にはもってこいのエリアです。いや、今日は練習じゃなく、本番なんですが。

よさ気に思えるポイントもちらほら。んで、幾度となくフライを流してみますが…釣れるのは枯れ葉だけっす。いるのかよ? ──そんな疑念が湧くころ、ヒレピン子とジーザスに釣果があった模様です。そーですか、いらっしゃるんですね。

気分一新。細心かつ丁重かつ入念かつ綿密なキャストを心がけてみます。が、何事も起こりません。まぁ、もうこっちは慣れっこで驚きもしませんけど。対岸に石灰石を加工する工場があって、プラントフェチにはたまらないモノクローム的造形美を眺めつつ釣りをするのが何とも不思議な気分です。

その工場の脇までたどり着くと、すぐ上流に「氷川国際ます釣り場」が目に入りました。日原川の一部エリア(800mくらい)が管理釣り場になっているのです。いったん川を上がって遠巻きしなきゃだめか…。ん、待てよ。ここで粘れば、無垢な“落ちマス”くんがフライを咥えてくれてもいいんじゃない?

期待を膨らませつつ、じっくりキャスティングしてみます。護岸沿いの深みあたりは、流速もいい感じ。しかーし。ただラインが漂うだけで、箸にも棒にも竿にも、まったくもって何も掛からないという有り様なのです。降参。管釣りとの境界を示すワイヤーロープの先には、放たれたマスが溜まっていたりするんだろうなぁ…。

そんな思いが頭をよぎった瞬間、渓の神が私に囁いたのでした。

You must buy a ticket to catch a trout.
──入場料金を払えば、あなたのロッドもしなる(かもしれないよ)

午後に入渓した日原川と多摩川本流の出会い付近。流れの透明度がこんなにも違うとは

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