美しい風景や旨そうな料理、そして希には水面に横たわる渓魚…。釣行時の記録を残す上で、デジカメは欠かせない存在です。
見た目の印象通りに綺麗な写真を残したいという願いを突き詰めると、一眼レフのボディに広角~中望遠のレンズ数本、しっかりとした三脚などを携行したくなってしまうのですが、出かける目的はあくまでも渓流釣り&野外料理。大げさな装備は「邪魔」以外の何ものでもありません。ベストのポケットに忍ばせておいて、さっと取り出してパチリと撮る。優先すべきは、描写性能うんぬんよりも携帯性。やはりコンパクトデジカメに手が伸びます。
目下、普段使いも含めて気に入っているのがリコーのコンデジで、GR DIGITAL IIとGX200を愛用しております。リコー機との付き合いは長く、銀塩フィルム時代にはGR1を使っていたことも。その後、デジタルになってからは初代GR DIGITALやCaprio GX100などを乗り継いできました。一連のシリーズはレンズが優秀だし、絞りやシャッタースピード、露出補正などをマニュアル感覚で使うのに適したインタフェースを備えています。いや、何よりも主張しすぎないデザインが好きなんです。
日常のスナップショットを楽しむならARTISAN&ARTISTあたりのストラップを付けて首から下げるのが“気分”ではありますが、撮影フィールドが川となれば、そういう訳にはいきません。コケて岩にぶつけたり、流れに落としたりしたら再起不能は間違いなし。慎重には慎重を重ねなければなりません。いかにして衝撃や水から守るか…。これまでの対策は以下の通りです。
●GR DIGITAL II
ペリカン(PELICAN)のマイクロケース「1010」にぴったり収まるので、こいつに入れてベストのポケットに
●GX200
Simmsのパッド入りロールトップバッグ「Drycreek Camera Bag」に収納。背面ループにベルトを通して腰にくくりつける
──こんな感じで、いずれか1台をその日の気分によって使い分けていました。難点を挙げるとしたら、ちょっとばかり「かさばる」こと。両機ともコンデジの範疇に入るとはいえ、昨今のスリムなモデルと比較すれば本体サイズはやや大きめ。それにケースが加われば、さらに取り回しは悪くなります。いざ撮影する時にはケースの蓋をあけて取り出す「ワンクッション」が必要で、多少の煩わしさも伴います。いや、もっと根本的な問題は、撮影時は“丸ハダカ”だということ。もし、この時に落としたら一巻の終わりなのです。
そんな面倒くささや心配と訣別させてくれるのが、「防塵防水カメラ」です。ある程度の落下や水没を最初から想定した“Rugged”なカメラは、元々は工事現場などのタフな環境で使うものとして銀塩時代からニッチな市場としてありました。それが2000年代の半ば以降、レジャーシーンを視野に民生用としても選択肢が増えてきたのです。これは釣り人にとっては嬉しいトレンド。「手荒な扱いも大丈夫」という安心感を超え、機種によっては積極的に水没させて「水中写真を撮る」なんてことも可能にしてくれます。
実際の使用感はどうなんだろう…。どうしても試してみたくなって2009年に入手したのがオリンパスのμTOUGH-8000です。カタログによると、「水深10mまでの防水性能、砂やホコリに強い防塵性能、高さ2mからの耐落下衝撃性能、-10℃の耐低温性能、100kgfまでの荷重に耐え得る強靭な構造…」。普通に釣りを楽しむ分には十分すぎるスペックです。いざ釣行に持ち込んでみると、乱暴な扱いもOKという安心感は想像以上のもの。水に濡れたままの手で操作しても大丈夫だし、時には釣果のリリースシーンを水中で撮影したりもできました。1度だけ岩場で落下させたこともありますが、ボディ表面にキズがついただけで動作には何の支障もありませんでしたしね。なかなかの実力。
とはいえ、慣れ親しんだGRDやGXと比べると、描写力はやや物足りなく感じることも。もちろん、そもそもの設計の方向性が違う訳だし、μTOUGHのクセを理解しきってない自分のスキル不足もあるので、私見で単純比較するのはフェアじゃないことは分かってますが…。それが“キレ“なのか“深み“なのかうまく言えないけれど、もう「一押し」あると、マイベスト釣りカメラになるんだけどなぁ。その点では、今年リリースになった「Tough TG-810」はとても気になる存在。画像処理エンジンは改良されているし、GPSも内蔵されている。Eye-Fiにも正式対応だ。──まずい、本格的な春の訪れと共に、物欲大魔王が永い眠りから目を覚まそうとしている予感が。(by ドングリ)