朝から気温はぐんぐんと上昇しています。日原川の支流、川苔谷に分け入り、川沿いの林道をひたすら歩いて行くと、テンションもまたぐんぐん上昇していくのでありました。
自分にとっては初めて訪れる場所だし、先だって川苔山に登ったブッタくんの情報によると魚影もそこそこあったらしい…。それにしても、老若男女、登山客の多いこと多いこと。こんなんで釣りになるのだろうかという一抹の不安も。
とりあえずの目的地に近づいて林道から流れのあちこちを覗き込むと…確かにいくつかのポイントにヤマメらしき姿があります。表層近くに定位している様子からすると、ドライフライでいけるんじゃない? 今日こそは釣りますよ。
あたりは山岳渓流の様相で、小さな落ち込みの連続。巻きの踏跡をうまく見つけないと先に進めない箇所もありそうです。こんな時こそ、振り出し式のパックロッドが役立つというものよ…。鼻息も荒く? ガイドにラインを通しながら準備を進めます。7~8m先に照準を合わせて、竿先からラインを十分に繰り出して用意万端。
さて、いっちょやってみますか。キャスティングに程よい空間が開けた淵に向けて歩を進めようとした時、目先の小岩の上で、可愛らしい子供ヘビが休んでいるのが視界に入りました。ヤマカガシかな。最初は靴紐が落ちているのかと思ったぐらいの大きさです。
巳年生まれで日頃からヘビくんには親近感が湧くワタクシ。先を急ぐ状況でもないので、カメラを取り出して、しばし観察です。アングルを変えながら何枚もシャッターを切る。でも、これじゃ大きさの見当がつかないかと脇に100円ライターを置いたところ、安眠を妨げてしまったのか、彼はそそくさと岩下の隙間に消えてしまいました。
──そうだ釣りだった。足元に放置しておいたロッドを手にすると、流れに任せてラインが下流に伸びきってます。気分を一新し、ラインを水面から引き剥がそうと勢い良くロッドを煽った瞬間、想定外のことが起きました。
ただ水面に漂っているだけと思っていたラインが、実は下方で流木の枝に絡まっていたのです。で、その刹那に耳にした「バキッ」という音の発生源は枝ではなく手元から。そうなんです。ロッドが折れて、心も折れた瞬間でした。トップから6番目のセクションがポッキリですよ。
林道を小一時間も歩き続けてやっとたどり着いたエリアなのに…。ドライフライもたくさん巻いてきたのに…。新しいロッドで今日こそ釣れる予感がしてたのに…。思い描いていたシナリオがもろくも崩れ去りました。
唯一の救いは、予備としてテンカラ竿をザックに入れていたこと。ドライフライを自然に流すのはなかなか難しいので、ケースの片隅にあったビーズヘッド付きニンフ(3個限定)での釣り。夕方に場所を変えた際、何とか小さなヤマメをかけることはできましたが気分は複雑。晴れ渡る空とは裏腹に、どんよりと曇る心に光が差すことがないまま1日が終わったのでした。
【教訓】 釣りを楽しむのに何よりも大事なのは「冷静沈着」な心