一昨年(2009年)の渓流シーズン、私はまだ毛鉤釣りに転向せず、餌を使ったミャク釣りをメインにしておりました。
ヒラタやキンパク、クロカワムシなどを現地採集して釣ることもあったんだけど、その手軽さ(現地に到着したらすぐに釣り始めたい!)から、やはり市販の餌に頼るケースが多かったかな。
ブドウ虫、キジ、瓶詰めキンパク、そして各種のイクラ…。様々なバリエーションがある中で、我々の周囲で評判がよかったのが先日のジーザスのエントリーにあった「絶好釣」という銘柄のイクラ。それまで、特段のこだわり無しにいろんな種類の餌を使ってたけど、ジーザスやヒレピン子のヒット率の高さを目の当たりにして、私も「絶好釣」に感化されていったのでした。
──その年の夏近くのある金曜日。翌日に丹波川釣行を控えていたにもかかわらず、仕事が詰まっていて餌を買いにいく時間がとれない…。どうしようかと考えていた矢先、家人からありがたい申し出がありました。「今日、高円寺にでかける用事があるから、上州屋に寄ってきてあげようか?」。店舗の場所も知っているらしい。スバラシイ。
とはいえ、普段から釣りに興味がない彼女に面倒な頼み事をするのも忍びない。「とりあえず渓流釣り用のイクラ餌なら何でもいいよ。もしあったら『絶好釣』というのをヨロシク」とだけ伝えておいた。
夕刻。なかなか結論が出ないミーティングに辟易していた時、携帯電話に着信が。ボリュームはかなり絞っていたけれど、妙な着メロ(パチンコメーカーKYORAKUの「キュイ~ン」というPフラ音)が静かな会議室に鳴り響いて、ヒンシュクをかったことだけは鮮明に覚えています。
電話の主は家人でした。
「もしもし? あのさー、餌さがしているんだけど無いのよ」
「え、イクラがないの?」
「それはあるんだけど、例のが無いの」
「いいよいいよ、そこにあるのでOKだから」
「ちょっと待ってね。詳しそうな店員さんがいるから」
電話口の声が男性スタッフに代わりました。
「お客様、あいにく当店は“ばくちょーきんぐ”というイクラの取り扱いがないんですよ」
「はぁ? いえ、あの…」
なんじゃそりゃ。「絶好釣」が、彼女の思考回路のどこかで「ばくちょーきんぐ」に入れ替わっていたらしい。表記するなら「爆釣王」? 「Baku Cho King」?
──何となく脈絡がない訳じゃないけれど、そんなの名指ししても無いっすよ。こちらの希望が「絶好釣」であることを告げると、その店員さんは「ありますあります、売るほどあります」と爆笑。夜遅くに帰宅すると、テーブルの上には、絶好釣のMサイズが2ケと、ノベルティ(ユーモア賞?)として頂いたらしきヤマメのキーホルダーが置いてあったのでした。
翌日の丹波川。絶妙のネーミングが功奏したのか、いつもにない爆釣モードです。ほぼ同じエリアで釣っていたジーザスと私は、午前の3時間ほどで合計20匹弱の釣果に恵まれました。そんなこんなで、一連の出来事以来、メンバーの間では、絶好釣を「ばくちょーきんぐ」と呼ぶのが慣わしとなったのでありました。